患者の皆様へ
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「○○状態と言われた。何のことだろう?」(2012年1月掲載)
2012年1月
精神科を受診し病状説明を受けた時に「○○状態です」と言われることが時々あります。これは一体、何なのでしょう。この表現は精神科独特のもので、お医者さんでも精神科医でないとピンと来ない表現です。
○○状態、具体的にはうつ状態とか躁状態などと表現をよく聞きますが、これは「その時点における精神科的病状」を表したものです。人が精神に変調を来す時には、ばらばらな方向で、ありとあらゆる変調を生じるわけではなく、一定のパターンがあります。○○状態というのは、変調のパターンのどれに当てはまるかを説明した表現なのです。例えば、「うつ状態」は元気が出なくなり、不快なゆううつが続き、エネルギーが湧かず、自信喪失におちいった病状を言います。「躁状態」は逆で元気が出すぎて、不自然に愉快な気分が続き、エネルギッシュに動き回る、強気になり、周囲と簡単にケンカしてしまう病状を言います。
この言葉は病状の変化を表す時に使うのが普通ですが、1回から2回の診察では診断が決まらない時に仮の診断として説明されることもあります。精神科では、診察時の観察による情報も大事ですが、今までの病状の変化がどうだったのか、ストレスや体の変化は無かったのか、検査所見で異常は無いのかなどの情報も診断を確定するうえで必要になることが多くあります。ですから、診察の初期の時点で十分に情報が集められない時には、とりあえず、診察時の観察情報だけで判断できる「○○状態です」という病状説明に終わることがあります。このような時には最終的な診断を決めるには、まだ情報不足なのだろうなと理解して下さい。
ここで、ひとつ強調しておきたいことがあります。「○○状態と言われ、薬を出された。診断がまだ決まらないうちに薬を服んでも大丈夫か」と心配する人もいるかもしれません。これは普通大丈夫なのです。精神科の病気の多くは最終的な診断がまだ決まらなくても、○○状態であることがわかれば、合う薬の見当をつけることが出来るものです。だから、診察時の観察により、「現在が○○状態だ」とわかれば、それをよくする薬をさがし出すことができます。内科の場合なら、頭痛がすれば、その原因が特定できなくても頭痛薬を出して痛みをやわらげることが出来るのと似ているかもしれません。
わかりにくい話なので、繰り返します。精神科にかかって○○状態と言われたら現在の、病状の説明を受けたと考えて下さい。そして、○○状態がわかればそれに合った薬を作ることは可能なので、もらった薬をキチンと服んで結果を主治医の先生に報告して下さい。これを繰り返すことにより、一番、自分に合った薬が作ってもらえるようになります。なお、報告する時には、効き目と一緒に副作用があったかどうかも教えることをお忘れなく。