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「人間関係」を考える(2014年11月掲載)
人間関係というものはいつでも難しいものです。しかし、人間はジャングルの中を一人でさまよいながら生きていく動物でありません。社会という群れの中で、その一員として生きていくスタイルを選ぶしかありません。言い方を換えると他の大勢の人の中でうまく生きていくしかない、暮らし続けなければならない存在だということになります。その場合、多くの人が常に悩み続けるテーマとして「人間関係」があります。
人間、それぞれ固有の条件を持っています。その人なりの能力、個性、立場、望み、悩み、意見などいろいろなものを持って生きています。そして、常に、様々な場面でお互いにふれ合いながら暮らしています。毎日、他の人々とうまくつきあうにはどうすればよいか、悩みながら暮らしているのが普通でしょう。上手くいかない時には、「何故、あの人はあんな事を言うのだろう」「あんな態度をとるのだろう」「私のあれが悪かったのだろうか」「私のことを嫌いなのだろうか」、思い悩む人は多いでしょう。
そのような場合、考えを深める工夫が二つあります。一つは「相手の立場に立って考える」という発想です。これは「相手の立場を尊重して自分の主張を押し殺し、何事も譲りなさい」という意味ではありません。自分が相手の立場になったら、「どう感じるだろうか、何を望むだろうか、事態をどうとらえるだろうか」を考えることです。そうすると、自分をめぐる全体がよく見えることがあります。もう一つ大事なことはよく観察することです。自分とはこういう関係だが、他の人とはどういう関係になっているかです。人間、他の人々に見せる態度は、案外、一貫しているもので、自分が悩んでいる点はどうやら他の人も悩んでいるようだと、ある「発見」をするかもしれません。
そうすることによって、話がかみ合わないのは単に立場が違うだけだと気づく場合もあるでしょうし、自分の主張に少し無理がある(人間、なかなか自分の非を認めることは難しいものですが)かもしれないと何となく感じる場合もあるかもしれません。あるいは、「自分だけでなく、他の人も困っているから、この相手の人とうまくつきあうのは無理だろう」と見通しがつくかもしれません。そうすると、「あの人とは出来るだけ、会わないようにしよう」とか、「表面的な話だけをして深くはつきあわないことにしよう」などの方針が立てられる時もあります。
人間関係は難しいものです。今、ご紹介した工夫で全て乗りきることが出来るわけではありません。もしかすると、時には少し役立つかもしれない、その程度の工夫です。しかし、全く、工夫がないよりはましです。あえて、ご紹介しました。
最後に一言、自分のまわりの人達全員とうまくやっていくのは無理です。必ず、気の合わない人、気を許せない人はいるものです。仮に、自分がまわり全員とうまくやっていくように努力していても自分の友人同士が大げんかを始めれば自分も巻きこまれます。数割くらい、気まずい関係の人達がいるのは当たり前です。あきらめましょう。ただし、きまずい関係が2割から3割でなく、5割くらいなら、少し、自分自身の人づきあいを反省してみる必要があるかもしれません。