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精神科の薬による「ねむけ」(2016年4月掲載)

精神科の薬はよく効くことが多いのと不愉快な副作用が多いと言われます。今回は、副作用の中で「ねむけ」について取り上げます。

同じ精神科の薬をのみ続けているのにねむけが強くなる場合があります。日中、何となく眠くなる場合もあれば、夜の眠る時間が長くなる、昼寝をしてしまうなどもあります。

このような時、薬をのんでいる患者さんや、一緒に暮らしているご家族は、つい、「病気が悪くなったのでは無いか」と心配しがちです。しかし、このような場合、ほとんどは逆の意味を持ちます。つまり、病気が良くなってきた証拠であることが多いのです。

その理由をお話しします。精神科の病気の多くは心が落ち着かなくなります。夜は眠れなくなります。そのため、日中、心が安定し、夜は十分に眠れるように薬を調整します。そのために、精神科の薬の多くは「日中の薬は心をしずめ(鎮静作用といいます)、寝る前の薬は眠りを安定しやすくする」作用を持ちます。言い換えると心がスピード違反にならないように軽くブレーキをかける効果を持つことが多いのです。

薬が、丁度、病状とつり合っている場合、例えば、時速60キロメートル制限の道路で病気のために速度が80キロメートル出てしまう場合は、20キロメートルのブレーキ効果の薬をのんでもらう訳です。そうすると、目標の時速60キロメートルになるので患者さんは安定したペースで生活を送ることが出来るようになります。ところが、病気の勢いが弱まり、時速70キロメートルになると、20キロメートルのブレーキをかけると時速50キロメートルまでスピードが落ちてしまい、健康な速度の60キロメートルよりも遅くなってしまいます。これがねむけとして出てくる訳です。

何か、算数の授業のようになってしまいましたが、要するに病気による不安、緊張が減るので余った鎮静作用がねむけの形をとるということです。

だから、同じ薬でねむけが出てくるのは、普通、病気が良くなってきた兆し(きざし)ですので、喜んでよいとなります。次の段階として、余計な鎮静効果を取り除くにはどうすればよいか、主治医の先生とよく話し合ってもらうことになります。喜びすぎて、薬を減らしすぎれば、また、病気が悪化してしまいますから。

同じ薬をのんでいてもねむくなるようになった皆さん、以上のようなわけですから、あわてる必要はありません。どの程度、薬を減らせそうか、主治医の先生とよく相談してください。薬の効果は様々です。早く減らした方がよい薬、絶対に減らしてはいけない薬、色々あります。必ず、主治医の先生の指示に従い、更に病気をよくするためのチャンスとして活用することを強くお勧めします。

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