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《生活習慣病とリハビリ》身体障害の増悪の危険因子(2001年2月掲載)
千田 富義(リハビリテーション科):秋田魁新報 2001年2月18日掲載
高血圧、糖尿病、脳卒中などを生活習慣病と言います。これらの特徴は長い経過をたどり、複数の原因を持つことです。名前の通り、食事、タバコ、肥満などの長期間の生活習慣も原因となり得ます。原因をつかみにくいのが生活習慣病の大きな問題となっています。肺炎などの急性疾患は原因の形態が生活習慣病とは異なります。肺炎は特定の細菌が原因となって発病します。検査で一つの原因を見つけ、その原因に対して抗生物質などの適切な治療を行います。治療がうまくいけば、その病気は完全に治ります。
生活習慣病は原因をはっきりさせることが困難ですから、急性疾患とは異なった攻め方を行います。その大きな違いは危険因子という考え方が用いられることです。脳卒中になった人には脳卒中になっていない人より喫煙者、肥満などが多いとされます。これらが本当に脳卒中の原因かどうかは別にして、これらの特徴は、持っていると脳卒中になる危険性が高いと考えられ、危険因子と呼ばれます。
危険因子が明らかになるにつれ、生活習慣病の発病前から危険因子除去の作業が可能となりました。発病前の対策、すなわち予防が重視されるようになったわけです。この場合、危険因子の除去は原因そのものの除去とは限らないので、治療目標は完全治癒ではなく発病の確率を低下させることです。
さて、身体障害もさまざまな理由で悪化することがあります。とくにお年寄りでは手足の不自由さが悪くなることがよくあります。このような障害の増悪も、複数の原因で起こる、生活の仕方にも原因がある、数ヶ月の長期経過でできあがる、など生活習慣病の場合とよく似た特徴を持っています。身体障害の増悪についても生活習慣病と同じく危険因子と予防の考え方を導入することが必要です。
身体障害悪化の危険因子として、退院時点での能力が低いこと、介護者が多過ぎること、などがわかっています。しかし、多くのことが生活習慣病での研究よりも不十分です。身体障害が進むことの危険因子は病気の進行などの身体状況、不規則な生活・喫煙・飲酒などの生活様式、家族支援の欠如・家屋構造の不適切などの環境条件に潜んでいると思われます。一層具体的に、これらの側面毎に危険因子を発掘し、その対策を考えることが重要であります。秋田では、冬期間の過ごし方も危険因子として分析することも必要です。障害悪化を予防することはリハビリ医としての大きな夢であります。
私たちの施設では、一昨年から近隣自治体の協力を得て「地域リハ検診」という小さな試みを行っています。検診によって、障害進行の危険因子を発見し、その対処方法を受診者に伝えることとしています。つまり、がん検診のように、障害進行についての早期発見・早期リハをもくろんだ事業です。他に例の少ない試みであり、何とかこの事業を大きく育てたいと考えています。
秋田魁新報 2001年2月18日