患者の皆様へ
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「社会資源の利用 症状や介護力を考慮」(2008年11月掲載)
下村 辰雄(リハビリテーション科)/秋田魁新報 2008年11月24日掲載
認知症患者ができるだけ快適、かつ活動的に暮らすためには各種施設や支援制度など社会資源の利用が欠かせない。介護者も身体的、精神的、さらには物質的支援を得られることで介護負担が軽減される。
社会資源の利用は2000年度(平成12年度)から介護保険法に基づいて行われている。患者の症状によって、要支援1、2と要介護1から5の七段階に分けて要介護認定を行い、居宅介護サービスか施設介護サービスを選択する。
主な居宅介護サービスとしてホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイ、福祉用具の貸与がある。一方、施設介護サービスには特別養護老人ホームや介護老人保健施設などがある。
こうした社会資源を利用する際は認知症の原因になった病気をはじめ、認知機能障害、精神症状、日常生活活動を阻害する障害、合併症に関して、その有無や程度などを考慮しなくてはならない。併せて介護者の年齢、健康状態、患者から見た続柄、同居か否か、ほかに手助けしてくれる人がいるのかといったことも考える必要がある。
居宅介護サービスを活用して在宅介護を行うためには、疾患の種類や障害の重症度が在宅で療養可能な範囲であるのに加え、患者が安全、活動的に暮らすのに必要な介護が提供されることが条件になる。条件が満たされないのにもかかわらず、無理に在宅介護を進めると廃用症候群(体を動かさないことで生じる体の不調)の合併、事故の発生などによって急速に認知症が悪化する恐れがある。また、介護者にも過度の負担がかかって共倒れになる可能性もあり、患者、介護者の双方にとって決して良い結果にはならない。
このように在宅介護か、あるいは施設入所が妥当かを決める場合は患者や介護者の希望だけでなく、必要な条件をかんがみて客観的に判断しなくてはならない。要介護度と介護者の「介護力」を比べ、施設入所が相応なケースも出てくる。適切な時期を迎えたら、主治医やケアマネジャーは施設入所を積極的に勧める一方、過度に早い段階での入所を予防することも求められる。
秋田魁新報 2008年11月24日