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リハセンだより第11号(2001年4月発行)

「もう、春ですね、毎日の運動習慣について」

機能訓練科長:宮 秀哉

今年(2000年)の冬は十数年ぶりの大雪で、一層雪解けが待ち遠しいものでした。雪があるために、滑ると危険あるいは寒くて外へ出られないと、自宅でじっと過ごしていた方も多かったことでしょう。彼岸に入り、やっと日中の暖かな春の日差しを感じるようになりました。このコンクリートの壁さえなかったら、風まかせ、ふらりふらり出かけたくなります。気の向くままに公園や川原など散歩するのも気持ち良いものです。ジョギングを楽しむ人も、屋外スポーツに親しむ人も多くなる頃です。

さて、近年、健康診断などでうるさく指摘される高血圧・糖尿病・肥満や高脂血症では、治療として投薬や食事指導の他、運動を勧められることも多いようです。運動と言えば、歯を食いしばり息もせず全身の力を振り絞るものと考えている方もいるかもしれません。このように息もしないでがんばりますと、見事に血圧が上昇し、血糖も上がります。また、長い時間続けることもできませんので、減量もできず、爽快感もありません。運動といっても、競技ではありませんから、誰かと一緒にお喋りでもしながら30分以上続けられるものが治療には適しています。例えば、歩く・ジョギング・サイクリングなどでしょうか。話しながら続けられる程度の運動をしているとき、おそらく心拍数が毎分110回未満で程よく体が温まる程度と思います。例えば、ウィークエンドに、通勤や買い物などを活用して、週3回程、楽しい散歩を30分間行います。約3カ月続けると、適度なストレス解消となり、高血圧や肥満も改善され、血圧では高い方の収縮期血圧だけでなく、特に低い方の血圧、拡張期血圧が下がってきます。しかし、外来で患者さんに熱弁をふるってもなかなかまともに受止めてもらえません。継続する、習慣付けるとは、如何に難しいことでしょうか。

でも、人に言われて始めるより、この春の日差しを求めて歩き回る方が自然です。仕事も忙しいでしょうが、勤務時間内に済ませて頂いて、空調のない戸外の自然の空気に触れては如何でしょうか。

痴呆性疾患の研修を終えて

神経・精神科:佐藤 隆郎

2月19日から23日にかけて、奈良県で開催された老人性痴呆疾患保健医療指導者研修に参加した。実は8年前にも同じタイトルの研修を受けていて、前回の研修と比較することができ、興味深かった。

多様な内容の中で、痴呆の病因に関して、アルツハイマー病の遺伝子研究の進歩には驚かされた。8年前にアルツハイマー病の遺伝子異常について丁寧に教えていただいた記憶があるが、その後アルツハイマー病の遺伝子の変化が次々に報告されているのだ。遺伝子変化と関連の深いアミロイド蛋白の異常はさらに研究が進むだろう。アルツハイマーが1907年に症例を報告して、数年後にアルツハイマー病と命名されてからまだ100年たっていないのに遺伝子研究が進むとは、医学の進歩の速さを感じさせられた。

しかし、痴呆の診断と薬物治療法の講義を受けて、8年前とほとんど変わっていないのにもまた驚かされた。確かにアリセプトという痴呆の進行を遅らせる薬が発売されたのは変化だが、うつ状態などの痴呆に伴う精神症状に対してなされる加療は、考え方としては基本的には同じものだった。

遺伝子研究が進歩しても、診断治療があまり変わらないのはなぜか。それは、遺伝子と症状との間に大きな距離があるからだと思う。遺伝子の変化が直ちに神経細胞の変化を引き起こすわけではなく、その間に様々な過程があるようだ。また、神経伝達物質と神経細胞の変化との因果関係も不明の部分が多い。様々なレベルでの研究の進歩が、遺伝子と診断治療を結び付けるのには必要である。

アルツハイマー病の原因がわかるのにはやはりまだまだ時間が必要だろう。とはいっても、痴呆の原因がわからなくてもよりよい治療を考えることは必要である。研修においては、行動療法、作業療法的アプローチ、個人精神療法、回想法などが痴呆に対して試みられていることが説明された。基礎研究はとても無理だが、自分なりに勉強して痴呆に対してよりよい治療を探っていきたいと感じた。

2001年4月「医療相談室が4人体制になりました」

医療相談室では、医療費や生活費の心配、社会福祉制度の利用方法を知りたい、退院後の生活はどうするか、その他の不安や悩みといったものついて、相談に応じています。

これらの相談には、1997年の当センター開設当初はソーシャルワーカー(医療相談室の相談員)は1人で、1998年からは2人体制で対応してきました。2001年4月から「ものわすれ外来」を開設し、また、6月からは新たな病棟をオープンさせるなど、患者さんやご家族の多様なニーズに応えるべく、様々に展開してきている中、医療相談室もそれに対応するため、4人体制となりました。

誰でも相談事には応じられるようにしてまいりたいと思いますので、ちょっとしたことでもどうぞ気軽にご相談ください。

2001年4月「300床フルオープンを前に、新年度における課題から」

遅かった雪解けも進み、待ち遠しかった春がやっと傍まで来たと実感される気候となりました。日頃は当センターをご利用いただき有難うございます。新しい年度を迎えるにあたり、神経・精神科を代表しまして御挨拶申し上げます。

2000年6月1日より秋田県精神科救急医療システムが稼動しましたが、このシステムの中で当センターは、特定の担当地域を持たず、全県を分担する5つの精神科救急医療圏の当番病院または地域拠点病院をバックアップするという、「全県拠点病院」と位置付けられました。2001年1月末までの8カ月間において、このシステムに基づいて当センターに相談・受診された患者数は43名で、その内の17名が入院されました。これらの患者さんとは別に、66名の患者さんがその日に急に紹介を受けて受診され、内54名が入院されました。この数字が、センターに期待されている精神科救急医療の役割を果たしていることを示すものと評価されるかどうかは、それぞれの立場の方によって意見が分かれるところと思います。今後とも県内の精神科救急医療のニーズに応じる体制の整備を推進するために尽力いたします。具体的には、当センターでの精神科救急受け入れ時間の延長を目指して必要な条件を整備中であります。

新年度における最大のニュースは、リハセンだより第7号でもお知らせいたしましたとおり、新年度の早い時期に、痴呆性疾患を有する人たちのための病棟(50床)が追加稼動されて、センター全体で計300床のフルオープンになることです。1997年6月に200床でオープンして以来、約4年を費やしたことになります。単に、病床数が増加したというのではなく、これまでとは異なる、「痴呆の診断と治療」の実践を行うことによって、当センターが幅の広い痴呆の専門機関として飛躍することができると考えています。痴呆かどうかの鑑別診断、軽症の痴呆の診断、さらに、痴呆の種類と程度に応じて最適のケアやリハビリテーションの方法を患者さんごとに検討・判定し、家庭や施設での生活に役立つアドバイスを提言できるものと考えております。このような医療を展開する基本は、神経・精神科とリハビリテーション科との連携を一層推進することにあります。医師だけでなく、看護者・作業療法士・臨床心理士などの、多職種による連携がこれまでの痴呆医療を超える力を発揮する鍵であると考えております。新病棟のオープンは6月を予定していますが、これに先行して、「物忘れ外来」を4月9日より開始しました。

今後とも一層の御指導や御鞭撻を宜しくお願い申し上げまして、新年度の御挨拶とさせていただきます。

(センター副所長、神経・精神科:飯島 壽佐美)

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