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リハセンだより第31号(2006年4月発行)

チームによる精神科医療の充実を目指します:精神保健福祉士の増員に期待する

副所長:飯島 壽佐美

一般に、患者さんの治療は、治療開始前よりも快適な生活を取り戻すことを目指して行われます。急性の身体的な病気では、入院期間が短くスムーズに入院前の生活に戻ることができる場合が少なくありません。そのような場合には、退院の準備等を自身やご家族だけで行うことになります。しかし、完全治癒の難しい病気や後遺症を残す病気の場合には事情が違ってきます。治療のための入院期間も長くなりがちですし、退院後の生活に備えて、機能の回復や獲得のためのリハビリテーションが必要になることがあります。

精神科医療も基本的には身体的な病気と同様です。症状はさほど激しくはないけれども、環境を変えることに大きな効果が期待される入院の場合などでは、特別な退院の準備をすること無しに、数日で退院していただく場合があります。

また、入院時の症状がかなり激しかった人の中にも、入院してから数日間の治療で急速に症状が改善し、一見、入院前の状態に戻ったのではないかと思われるほどに回復する方もおられます。そのような方の場合に、ご本人やご家族が早期の退院を希望されることがありますが、退院の時期については慎重に検討する必要がある場合がほとんどです。精神的な調子を崩した要因を検討し対策を講じないと、入院前と同様の症状を繰り返す危険性が予測されたり、目立った症状が落ち着いていても心身が疲弊した状態はしばらく続くことが多いのです。その状態ですぐに仕事に復帰すると、強い疲労をきたして症状が再燃する場合もあるのです。スムーズに、かつ、適切な時期に職場や家庭に復帰するためには、それぞれの患者さんのおかれている状況について十分に吟味し、患者さんを取り巻く人たち(治療者、ご家族、職場の人など)と必要に応じて話し合いの機会を設定することが必要になる場合もあります。入院が長引いたり、入院時とは住む環境が変わった場合などでは、その地域での支援体制の確保や充実のために関係者間の連絡と調整が必要となることもあります。

「精神衛生法」が施行されていた20年以上前の時代には、主治医や看護師などがご家族との間に入って調整することが多かったのですが、「精神保健法」、「精神保健福祉法」の時代と移っていく中で、患者さんを中心として、ご家族とともに種々の職種の専門職がチームを形成して援助していくようになってきました。

そのような流れの中で、1998年に精神保健福祉士法が施行され、国家資格としての精神保健福祉士が誕生したのです。患者さんが利用できる社会資源、支援制度などに精通し、関係者のコーディネイターとしての役割を担う専門職です。

実は、新年度に、新たに精神保健福祉士が当センターに採用となり、5月より業務を開始します。まだ、若いですが、皆さんの暖かい見守りを受けながら成長し、大きな力を発揮していくものと期待しております。宜しくご支援下さるようお願い申し上げます。

行事で見るリハセンの1年

8月:納涼祭

10月:運動会・リハセン祭

12月:クリスマス会

高機能発達障害:「やればできるのだから」の苦しみ

神経・精神科:室岡 守

最近、知能の遅れが目立たない発達障害について注目されるようになってきました。1つは、不注意、多動性、衝動性が他の子どもと比べて明らかに目立つADHD(注意欠陥多動性障害)と呼ばれる子どもたちです。ADHDについてはまた別の機会にお話することにして、今回はもう1つ有名な「アスペルガー症候群」とか「高機能広汎性発達障害」とか呼ばれる自閉症の仲間の障害のことをお話しします。学者によって意見が異なりますが、ここでは「アスペルガー症候群」と「高機能広汎性発達障害」とをほぼ同じものとしてまとめてお話しすることにします。

「自閉症(自閉性障害)」についてはご存知の方も多いと思います。思い切った言い方をすると、「発達障害の1つで、知的能力に偏りがあることも多く、いつも自分の世界に没頭していて、家族や他の人たちとうまくコミュニケーションがとれない。そのため人づき合いは不器用で、家でも外でもマイペースがきわだっている」ということが特徴です。「自閉症」と「アスペルガー症候群」との大きな違いの1つは知的障害の有無にあります。つまり、後者は「知的能力の明らかな低下が見られない比較的軽度の自閉症」と言ってもいいかもしれません。

「アスペルガー症候群」では幼少時には明らかな「知的障害」が見られないため、ある時期までは、特に問題なく学校や社会生活を送ることもできます。仲間ともそれなりにやっていけるため、その子が障害を持っているということに気づかれず「正常」な子どもというレッテル(?)を貼られてしまいます。これが、精神遅滞や狭い意味での自閉症とはまた違った苦しみの始まりとなることがあります。彼ら彼女らの天真爛漫で素直すぎる行動パターンは、思春期・青年期になると「場が読めない」「デリカシーのない」「図々しい奴」ととられ、友達はできにくくなり、仲間からは浮いた存在となり、時にいじめの対象ともなることもあります。さらに家庭や学校からは「社会のマナーを厳しくしつけ直さなければならない。やればできるのだから」と、それまで彼ら彼女らが精一杯背伸びをしてきた以上の背伸びをさせられることとなります。学校や職場に適応できなくなってくると、結果として追いつめられてパニックを起こしたり、さらにはうつや精神病的な反応を起こし、私たち精神科医がお会いすることとなってしまいます。

しかしながら「アスペルガー症候群」の診断は実はそう容易ではありません。それは非常に矛盾したことでありますが、先ほど書いたように、知能も含め「正常」な部分が多いからなのです。また、時にはADHDや統合失調症と区別がつかないこともあります。医者と出会っても診断がつかぬまま、本人から「あんなところへは行きたくない」と嫌われ、別れの時を迎えることもあります。それでも、もし診断がつけば彼ら彼女らの人生の転機となる出会いになることもあります。

さて、診断がついたとしたら私たちはどういう援助をすればいいのか?それは、彼ら彼女らの人より優れた能力、「没頭する」ということを最大限に引き出すことがポイントだと思います。

紙面の都合でここまでとさせていただきますが、もし興味をお持ちいただけたなら、書店には一般の方向けの本がたくさん並べられていますし、ホームページにも山ほど記事が見つかりますので、お読みいただいて、彼ら彼女らの良き理解者となっていただければと思います。

退任にあたって

齋藤 京子

写真:総看護師長・斎藤京子

3月生まれの私は60歳の誕生と同時に退職を迎えることになりました。

1969年県立中央病院に勤務し、大学病院に移管、1977年から県立衛生看護学院、太平療育園、リハビリテーション・精神医療センターと37年間の看護師人生でした。サザエさんよろしく、あわて者でおっちょこちょいの私が今日まで無事に勤務出来たことは多くの方々にご指導いただき、支えられてきた賜であると心から感謝するものです。

退職を迎える今、いろいろな事が脳裏をよぎります。3週間も意識不明の患者さんが回復されたときの喜び、一方では期待の星であった息子さんを失った家族の悲しみ、生と死の狭間で織りなす人間模様から多くのことを学ばせていただきました。大学病院では県内第1例目の腎臓移植にも関わることが出来ました。提供される方はもちろんですが提供する方の苦痛がより大きいことを目の当たりにし、看護の難しさを痛感したものです。

リハセンでの経験は7年間でしたが2000年問題に向けての対応や病院機能評価機構の認定に向けて協力し合ったこと、院内行事への参加等々若さとパワーのある看護師をはじめ、各職種の方々からエネルギーをいただき楽しく仕事が出来たことに感謝です。

2月に開催されたオリンピックや現在行われているパラリンピックで、各選手の活躍ぶりを観ながら、その陰には選手達の強い精神力と継続した訓練、家族や多くの方達の支えがあった結果だと思い、感動しております。

社会の変化に伴い病院に求められることも複雑多岐にわたり課題は多くあります。私自身がけてきたことは「chance」「change」「challenge」「coaching」の精神です。力不足のため成果は少なかったと思いますが、全職員が各専門分野の知恵を出し合い、リハセンの更なる発展に向けて「4C」の精神で活躍されることを念じております。

【シリーズ放射線その4】最終回

診療放射線技師の被曝と安全管理

診療放射線技師は、その名のごとく医療での診断や治療のために放射線を扱う職業で、その被曝は職業被曝といい、患者さんなどがCT検査などによって受ける医療被曝とは、分けて考えられています。

人体への放射線の影響などを考慮した、年間の被曝の限度(影響がないとされる上限)が法令(放射線障害防止に関する法令)で定められており、この限度を超えないように業務を行うため、検査介助の際は、防護エプロン(放射線を通さない素材)の使用や、撮影室の構造も不要な被曝をしないように備えています。

しかし、避けられない被曝については、個人用の被曝測定器である「フィルムバッチ」で放射線の被曝した量(被曝線量)を測定し、限度を超えないように管理しています。

「フィルムバッチ」は小さな名札のような形で、病院内では、診療放射線技師などが、白衣の襟やポケットに付けています。見かけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。診断や治療で役立っている放射線は、五感では感じられませんが診療放射線技師は、様々な安全管理のもとで検査を行っています。

編集後記

長かった冬もようやく終わり、桜が待ち遠しくなってきました。

今年は診療報酬、介護報酬のダブル改定でどこの施設も対応に追われていると思います。ストレスをため込まず、花見でもして発散しましょう。

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