センターについて
about
リハセンだより第35号(2007年4月発行)
退職にあたって
副所長:飯島 壽佐美
私事ながら、2006年度末をもちまして秋田県立リハビリテーション・精神医療センターを退職しましたことを御報告し、一言ご挨拶をさせていただきます。
私は、秋田大学医療技術短期大学部(当時)を辞して1995年10月に県職員となりましたが、その前から、県立リハビリテーション・精神医療センターの設立準備を担当する委員会委員を務めておりましたので、センターの基本的な運営方針に関することを含め、その構造から機器に関することまで、約13年余りの間、どっぷりとセンターに漬かってきたという感覚です。
この間の経験を振り返って見ますと、精神科医ですので、看護の方など、コメディカルの人達と一緒に机を並べて仕事をすることは自然な感覚で行えましたし、それまでの経験と似ており戸惑いを覚えることはありませんでしたが、事務系の方々と、密に、ほとんど一体となって仕事をしたのは、初めてであり、かつ、貴重な経験となりました。
当初に目指していたセンター機能の達成について、いくつかのハードルにぶつかりながらも、これまでほぼ順調に進んで来れたと感じておりますが、これは、多くの優秀なスタッフに恵まれたことと、併せて、センターの利用者とそのご家族の皆様を始めとする県民の方々の御理解のお陰と感謝しております。
とはいえ、県立病院であるセンターへの県民の期待は非常に大きく、その役割をすべて果たすためには、多くの課題を抱えている状況にあると言わざるを得ないでしょう。センターは、今後も、その恵まれた設備環境と人員配置を生かすことにより、県内の精神科医療・保健・福祉の中核的存在として、さらに力を発揮していく使命があると思います。センターのすべての職種が、勿論、事務職員を含めてですが、力を合わせることによって、達成できると考えています。
この度、定年を待たずにセンターを退職いたしましたが、センターでの経験を生かして、次の職場でも県内精神科医療の向上に努めますので、宜しくお願い申し上げます。また、これからは、傍で、それも近いところで、センターの活躍を見守っております。
センターのさらなる発展を期待致しまして、御挨拶とさせていただきます。
2006年度の医療サービス向上部会活動から
医療サービス向上部会は当センターの院内委員会の1つとして、2004年6月に発足致しました。今年で活動開始後3年となり、去る2月20日にはセンター内で例年恒例となった年次活動報告会(第3回)も無事終えることが出来ました。本紙面では、当委員会の役割とこれまでの活動を振り返り、2006年度の主な活動、来年度以降の活動見通しについても触れて報告いたします。
医療サービス向上部会の役割とその活動
医療サービス向上部会は、当センターを利用する秋田県民の皆様が、当センターを県民自身の財産として誇りに持ち、患者やその家族として、外来診療や入院治療を受ける際には、その医療の質は無論、その療養環境や病院スタッフのサービスにも十分満足がゆくように、センター機能を各方面から点検し、その向上を図ってゆくことを目標に設置されました。このため、センターのユーザーである患者さんやその御家族からさまざまな機会を通じてその意見を集約する機会を準備して参りました。2004年度は外来看護部門が中心となり、外来利用者の満足度調査を行いました。2005年度は各部門から医療サービス面での自己評価と課題を提出していただき、病棟の一部で試みた入院患者さんの医療・療養環境に関する満足度調査と合わせて検討しました。そしてセンター全体としての医療サービス向上の課題を整理し、また患者さんの意見集約を一時的なものから恒常的なものに代え、その時々のニードに応じた意見・感想を知る目的で、全病棟の入院患者さんを対象とした退院時アンケート票を完成致しました。2006年度はこのアンケートを実際に試行し、委員会でその結果を月毎に集約し、検討する場を持ってきました。
退院時アンケート票と2006年度集約の一部から
退院時アンケート票はA4用紙1枚の表裏を利用するものです。回答者の性別・病棟・本人か家族かの別を尋ねる以外は個人を特定できる項目はありません。1から25までの質問事項があり、(1)入退院手続きなど事務手続き、(2)病院職員全体のマナーや身だしなみ、患者さんへの対応、(3)医療・療養・治療・介助・訓練などに関すること、(4)職種とその対応、(5)センター全体の満足度の結果として、今後の利用や他者へ利用を勧めるか?、などを訊いています。最後に自由記載欄を設けて、全体的印象や疑問・質問があれば記載できる形式となっています。質問事項は極力、期待する答えを誘導する質問は避けましたが、全体に多くの方が良い印象を持って退院してゆかれていることがわかる内容でした。自由記載欄でも感謝の言葉を記したものが多く、スタッフに対する励ましもたくさんいただきました。他方、医療スタッフが多忙で声をかけにくい、退院後の行く先について十分相談できずに悩んだ、食事に季節感がない、売店や銀行のATM利用が限られる、電話での応対が悪い、訓練内容に工夫が必要、等などの今後検討すべき御指摘も多数いただきました。
委員会のその他活動と今後の予定
医療サービス向上部会は、退院時アンケートの集約結果や各職域からのアイデアや提案を元に、事務部門(総務管理課など)と協力してセンター内の環境向上に取り組んできました。トイレや売店・レストラン案内の表示をわかりやすくしたほか、訓練室や病棟への誘導の表示も工夫致しました。センターの顔となる玄関付近の廊下カーペットのカラーを工夫したり、また2008年度には医事窓口付近に観賞魚用水槽を設置・整備する予定です(事務部長さんのご尽力です)。直接的な患者サービスについては、これまで主に外来患者を対象に簡単なライブラリー(自由閲覧図書)を用意しておりましたが、2008年度は入院患者を対象としたイブラリーを設置する予定です。これらの医療・療養環境の整備には、勿論お金もかかります。しかしセンター職員のアイデアをいただきながら最小の予算で最大の効果を得られるように2008年度以降も奮闘しようと思っております。皆様のお力添えを期待いたします。
(医療サービス向上部会担当:佐山 一郎)
リハビリ講座の紹介
当センターでは毎月1回、患者さんやそのご家族を対象にリハビリ講座を開催しています。講師はセンター内の職員でリハビリテーションに関すること、退院後の生活で気をつけること、飲んでいる薬について、栄養管理について、介護保険についてなどなど多岐にわたります。今までに行ったテーマは「廃用症候群について」「杖と手すりについて」「ストレスをためないために」などです。
入院されている患者さん方はリハビリテーションとはどういうことをするのか、また退院後どのようなことに注意をしたらいいのかなどさまざまな疑問や不安を抱えていると思います。それらの疑問・不安に対して私達センター職員がわかりやすく説明・紹介するのがこのリハビリ講座です。
1講座は20分で毎回2講座行われます。ポスター・ちらしなどで案内をします。皆様の参加をお待ちしています。
- 開催日時:毎月第四金曜日(午後4時から)
- 会場:リハセン2階講堂
どなたでも聴講できます。興味のある方はお気軽にどうぞ。
高次脳機能障害シリーズ開始にあたって
高次脳機能障害とは、交通事故や脳血管疾患(脳卒中など)により、脳損傷を経験した人が、記憶・注意・思考・言語などの機能に障害を抱え、生活に支障を来たすことをいいます。
高次脳機能障害は以下の3つの特徴があります。
- 外見上は障害が目立たない。
- 本人自身も障害を十分に認識できていないことがある。
- 障害は、診察場面や入院生活よりも、在宅での日常生活、特に社会活動場面(職場、学校、買い物、役所や銀行の手続き、交通機関の利用等)で出現しやすいため、医療スタッフに見落とされやすい。
こうした高次脳機能障害者は、外見からは分かりにくく、障害を知らない人から誤解を受けやすいため、人間関係のトラブルを繰り返すことも多く、社会復帰が困難な状況に置かれています。また、身体の障害が軽症の場合、精神障害とも認められない場合が多いので、医療・福祉のサービスを受けられず、社会の中で孤立してしまっている状況もみられます。
皆様にこの症状を知って理解していただきたいと考え、次号より具体的な高次脳機能障害の症状や問題について解説していきます。
高次脳機能障害を理解するためのお勧めの一冊
山田規畝子著「壊れた脳 生存する知」発行:講談社(本体価格:1,600円)
2007年1月19日にフジテレビ系列でドラマ化されました。著者の山田 規畝子さんは「左側を失ったママ」というタイトルで世界仰天ニュースにも出演されているので知ってる方も多いかと思います。最近「それでも脳は学習する」が出版され、これもお勧めです。
シリーズ理学療法最終回
私たち理学療法士がみなさんと行う治療方法として、運動療法・物理療法については2回にわたり紹介してきました。この2つの治療法はみなさんの体を直接治療することで改善を図る方法ですが、理学療法士がお手伝いできる方法として、様々な道具を使用したり、生活環境をより良くする方法があります。具体的には筋力の弱くなった足を補助する装具と呼ばれる道具を使用することや歩く時に杖などの補助具を使うこと、そして、より安全に生活しやすいよう自宅などに手すりを設置するお手伝いをすることなどがあります。
私たちが日々みなさんと取り組む練習の目標は退院後の生活を想像し、少しでも楽にできる動作方法を考え、身につけていくことです。その方法は1人ひとり異なり、また生活される場所によっても違ってきます。ですから、必要な道具・補助具もその方に適したものが必要となり、さらに生活しやすく、また介助もしやすいものを選ぶことも重要になってきます。1つの適切な道具を使うことで動作がとても楽になり、より多くの活動ができるようになることがあります。「体のことや生活のことで少しでも改善できないものだろうか」と悩んだら、担当の理学療法士に相談してみて下さい。一緒に解決法を考えましょう。
編集後記
リハセン開設準備から長い間リハセンの精神科医療を支えてくれた飯島先生、お疲れ様でした。新しい職場でのご活躍をお祈りしています。