センターについて
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リハセンだより第12号(2001年7月発行)
ボケ(痴呆)は生活習慣病?!
医療部長(リハビリテーション科):佐山 一郎
最近、痴呆原因として半数以上を占めるアルツハイマー病のうち、家族性アルツハイマー病の遺伝子が同定されたことや、同疾患の多くを占める弧発性アルツハイマー病の遺伝子発現機序が解明されるなど、アルツハイマー病治療に関係した様々な研究成果が報告され、話題となっています。他方、秋田県出身で老年病の権威、大友栄一先生は最近の新聞のインタビューで「(アルツハイマー病を含めた)ぼけは生活習慣病のひとつ」と述べられています。脳卒中やガンなど、すでに生活習慣病として十分に認知されている疾患に比較すると、この認識を奇異に受け取る方も多いかもしれません。しかし脳卒中・ガンなど、その発症のしくみに思いをいたすとおわかりのように、これらの疾患は様々な複合要因が関係して発症するもので、”ぼけは生活習慣病のひとつ”という認識は決して過言ではないように思います。結果として生じている、ボケ症状や問題行動を”変性疾患だから打つ手がない”と言ってしまえば、今必要とされている痴呆性疾患の治療や対処法に門を閉ざす事になりかねません。われわれのセンターに痴呆性疾患を取り扱う第2の病棟(6病棟)がオープン致しました。これを好機として、精神科とリハビリテーション科がこれまで以上に力を合わせ、英知を結集し、痴呆症状発病の原因となった生活習慣を含めた複合要因の一つ一つに迫る治療の試みを是非展開していきたいものです。
もの忘れ外来による痴呆の適切な診療と、新規に開設された6病棟の役割
リハビリテーション科:下村 辰雄
高齢になると、人の名前を思い出せなかったり、物の置き忘れなどが生じ、それらを痴呆の始まりではないかと心配される人が多いと思います。
痴呆とは、
- 1度獲得した知的機能が何らかの原因で低下する
- 以前の状態に戻せない
- 社会生活や個人生活に支障をきたし、自立した生活ができなくなる
など、3つで定義されています。
痴呆になると、物忘れ(記憶障害)のほかに、
- 日時が分からなくなる(時の見当識障害)
- 自宅の場所が分からずに迷子になる(場所の見当識障害)
- お金の勘定が出来ない(計算障害)、
などの症状が合わさってくるので、物忘れだけでは痴呆とはいえません。
物忘れには、アルツハイマー病や脳血管性痴呆など、痴呆の1症状として生じているもの(病的物忘れ)と心配のいらない年齢相応の物忘れの2種類があります。
心配のいらない物忘れでは、
- 経過しても進まない
- 日常生活に重大な支障がない
- 迷子になったり、夜間に騒ぐなどの問題行動が生じない
- 自分の置かれている場所や状況を正確に把握できる
- 人格が保たれているなどの特徴を有しています。
一方、病的物忘れでは、症状が進み、さらに悪化し、物忘れによって他人や社会に多大な迷惑を及ぼすようにようになります。
物忘れを心配している人は、1度専門医の診察を受け、心配のいらない物忘れなのか、それとも痴呆の始まりなのかといったことを見極めることが大事だと思います。
6病棟の役割
米国では1997年米国老年精神医学協会,アルツハイマー病協会,米国老年医学会から、アルツハイマー病と関連疾患の診断と治療について、患者に対しての適切な診断と治療、介護者への介入(介護者教育)、患者に対しての質の良いケアシステムの提供を行うことが、特に大事であることが共同宣言として勧告されています。
新規に開設された6病棟では、痴呆の早期診断と、診断に基づいた認知障害や行動神経学的症状に対しての適切な治療および日常生活上の障害や機能低下に対する対応とケアを実施しています。これらの総合的な治療・訓練の効果判定には認知機能、日常生活動作や精神症状の客観的・定量的な指標を用い、在宅時のケアや質の良いケアシステムの提供に役立つように、介護者教育や家族指導として御家族に還元しています。
2001年6月「第4回リハセン祭開催!」
6月9日土曜日に第4回リハセン祭が行われました。
今回のテーマは『目指せ健康秋田21:見直そう私とあなたの生活習慣』でした。参加者の多くは、骨密度検査や貧血検査を受け健康チェックを行っていました。
また、秋田大学医学部耳鼻咽喉科助教授宮崎総一郎先生の「肥満やアルコールと睡眠時無呼吸の関係」についての記念講演には、約100名程の方々が参加され熱心に耳を傾けていました。更に、地域の方々の水墨画の展示やアマチュア写真家の写真パネル展示コーナーは、参加者の目を楽しませてくれました。
祭りに参加された地域住民の方や医療関係者、そして患者家族など300名程の方々はリハセンをより身近に感じていたようです。
2001年6月「ケア・シリーズ第4回を終えて」
リハセン企画、ケア・シリーズ第4回は去る6月1日、当センター講堂にて『脳卒中後遺症の診かたとケア、(4)在宅生活へ向けた援助』と題して開催されました。当日は、センター外から120名の参加者があり、講堂はいつもながら熱気1杯で、その温度調整に苦労する1幕もあった次第です。これまでのさまざまな試行錯誤から、本シリーズの参加者(聴講者)の的は徐々に絞られてきました。老健施設や介護支援センター、リハビリテーション病棟のある病院などの看護婦・介護職種・リハビリ関連職種など、高齢者や障害者の介護や指導・訓練などに直接携わる職種に限られてきました。
会場となるセンター講堂の収容能力から今回の参加者数が最も妥当な数のようです。昨今、われわれのケア・シリーズを含め、有料・無料の講習会は多数あります。リハセンを知って欲しいため、出来るだけ多くの関係者を集めた開講当初の目的と、現在のケア・シリーズ開講の目的とは異なってきて当然でしょう。今回のテーマは「在宅へ向けた援助」ということで、必ずしも参加者の必要とするニードに答えたテーマなのか疑問もありました。しかし予想以上に多数の方々(しかも参加リピーターが多い)が参加されたのは、そのアンケート結果から拾った声でも示されるように、「今必要とされる知識・技術というより、高齢者や障害者の介護に従事するものとして、知っておくべき知識を広く勉強したい」という学習意欲に支えられたものであったようです。講演内容については、「よくわかり、勉強になった」との声がだいぶぶんを占め、おおむね好評でした。
今後のケア・シリーズの時期とテーマについて、その声を手短に要約すると、「雪の降らない時期に、おもに痴呆患者への対応」という希望が最も多かったようです。しかし痴呆性疾患の理解やその患者への対応については、当センター以外での各種講習会の企画も多いようです。リハセンならではの企画を練って次回に繋げたいと考えております。今回も講習会の企画・準備・運営に参加を頂いた、センター内の各位にこの紙面を借りて御礼致します。また、御参加頂いた方々には、今後もケア・シリーズを日常業務に活かせる内容に育ててゆくため、御支援を願う次第です。
(医療部・リハビリテーション科:佐山 一郎)