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リハセンだより第10号(2001年1月発行)

謹賀新年

新年明けましておめでとうございます。

ご主人の介護を懸命に続けていらっしゃるあなたにはいつも敬服しております。ご主人の目がいつも穏やかですっかり頼りにしている様子を見ると、あなたの努力が伺われて私の気持ちまで暖かくなるような思いでおります。記憶や瞬時に判断する能力が低下しているため、ご主人自身もいろいろ不安なことも多いはずですが。

昨年のある診察日にあなたが漏らした言葉が頭から離れずこうして筆をとりました。あのとき、あなたはご主人の最近作られた短歌の感想をお話になりました。元気なときの歌は技術的にはうまかったが、少し技巧に走っていた。今の歌は本当の気持ちが素直にでていて、この歌の方が私は好きであるという内容でした。そのとき私はさりげなく聞いていましたが、実はその話に大変感動していました。日常の介護の困難さのために、病前より悪いところや現在の苦労ばかりが見えがちなのが普通です。それなのに、あなたはご主人の行為のわずかのことをも感じ取る素晴らしい感受性をお持ちで、さらに病前とは違った現在のご主人の新しい価値を発見されていました。このような姿勢であるからこそ、ご主人がいい状態を保っているのだと推測致しました。

私が医者になり立ての頃から医療は、加速度的に進歩してきました。このような医学医療の進歩は病気の状態をより正確に検査することや、治療の客観的な基準を追求することなどによって達成されました。検査技術の発展は身体に傷をつけずに病気をより正確に発見できるようになりました。治療技術の進歩によって、難病に悩む患者さんも前途に光明を見いだすことができました。病気をより精度の高い方法で分析してより確実な根拠に基づいて治療する、いわゆる「根拠に基づいた医療」は20世紀の大きな成果でありました。

しかし、脳卒中や高血圧などの生活習慣病の増加が一層問題となり、1人1人の健康管理の重要性が指摘されている今、客観的な根拠に基づいた医療と言っただけでもすまないような気がします。1人1人の生活があり、1人1人の物語があります。病気に対する恐怖の持ち方、大切に思う人の存在、人生の目標などで、人はさまざまに生きているはずです。人によって医師の指示の受けとめ方が違うかも知れません。同じ病気でも医師のアプローチは異なるべきかも知れません。21世紀には、1人1人の生活を意識して、各人が自分の健康管理に積極的に取り組むような医療の在り方について考える必要があると思われます。ご主人に病気に立ち向かう勇気を与えるあなたのお話はそのような医療を考える上で非常に参考になります。

あなたのあの一言にこめられた思いを心に刻みながら、21世紀のリハセンの医療がどうあるべきか検討し続けたいと考えています。

(センター所長、リハビリテーション科:千田 富義)

2000年11月「ケア・シリーズ第3回を終えて」

リハセン企画、ケア・シリーズ第3回は去る11月1日、当センター講堂にて『脳卒中後遺症の診かたとケア、(2)言語障害とその周辺』と題して開催致しました。当日は、センター外から108名の参加者があり、講堂はいつもながら熱気1杯で、その温度調整に苦労する1幕もあった次第です。これまで2回の開催でさまざまな試行錯誤がありましたが、この度は老健施設や介護支援センター、リハビリテーション病棟のある病院などに案内したほか、さきがけ新聞の『あきた暮らしの情報』にも案内を掲載致しました。その結果、参加者の内訳は看護職が約半数を占め、次いで介護職種、リハビリテーション関連職種、教員の順でした。一般の方の参加は2名でしたが、身近にテーマに関わる事例を経験されている方々なのか、専門用語が飛び交う講義に関わらず、熱心に耳を傾けられておりました。講演の1は下村辰雄医師による「高次機能障害を主とした総括的事項」、講演の2は中野明子言語聴覚士による「失語症の説明と言語訓練について」、講演の3は、看護科・照井和子主任による「1事例を通した重度失語症患者への対応について」でした。これらの講演の内容については、参加者の理解を深めていただく目的で、これまで同様に冊子を配付致しました。

参加者アンケートの結果から

企画全般や講演内容、配付した冊子について、および今後の希望テーマと開催時期について、参加者にアンケートをおねがいしました。ここにその結果の1部を紹介します。企画全般とセンター職員の対応については、御礼の言葉と同時に、「皆さん親切で、とても勉強になりました」、「継続参加希望を希望します」、「”年2回から3回程度”、”2カ月に1度程度”行って欲しい」など、企画に期待と感謝を寄せる声が多々見受けられました。また、「1日1分時間をかけて知識を吸収できる、ゆとりあるプログラムで」、「メモを取れるような明るさと机が欲しい」など、今後の開催方法に1考を求める意見もみられました。講演内容についての感想をみます。講演1は「専門用語が多すぎてわかりにくい」、「講演時間内で消化できない」など、「全体に難しかった」とする方が半数を超えていました。他方、講演2と講演3については「おおむねよく理解できた」との印象でしたが、「専門職のいる病院での対応が主で、自分たちの現場に適応できるか疑問」など、講演内容を実際の現場に活かすにはもう1工夫が必要との意見もありました。冊子についてはこれまでの形式・内容を妥当とする意見が大半を占めました。ただ、「冊子を事前に配付してもらえば質問もしやすい」との意見があり、今後の検討が必要です。今後の開催時期については、来年1月から11月まで様々なご意見がありましたが、来年4月開催の希望が最も多かったようです。

今後の希望テーマについて

今後予定のケア・シリーズ、希望テーマについては、嚥下障害に関する希望がやはりもっとも多い結果でした。ただ、その内容では「経管栄養から経口摂取への試み」、「胃瘻管理、強制栄養時の管理」など、より細かなテーマの希望がみられるようです。そのほか、「リハビリテーション全般」・「高次機能障害、特に失語や失行の訓練方法」・「痴呆について」・「ケア、特に障害老人や痴呆患者の転倒予防・問題行動への対処・緩和ケアを含めて」などなど、多数のテーマについて御希望がありました。いずれも参加された現場のスタッフみずからが抱えている問題をさまざまな面から掘り下げて学習したい、との熱心な希望の現れと感じた次第です。これらの声に耳を傾けながら、来年度以降のケア・シリーズをさらに現場の方々に役立つものに発展させられればと願っております。

(医療部・リハビリテーション科:佐山 一郎)

2000年10月「2000年、リハセン大運動会開催」

10月5日木曜日にリハセンの大運動会が行われました。恒例のパン食い競走に始まり、玉入れ、借り物競走、綱引きなどたくさんの種目に患者さんや職員が汗を流しました。

競技に夢中になって車椅子から思わず立ち上がる人や、日頃聞いたことのない大きな声で応援する人等、普段の入院生活では見られない新たな能力を発見することもできました。

日頃のストレス発散にもなった、楽しい1日を過ごすことができたようです。

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