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リハセンだより第22号(2004年1月発行)

2004年 新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。

リハセン開設以来、7回目のお正月を迎えることとなります。この間、障害を持った沢山の患者さんの治療と社会復帰のお手伝いをさせて頂きました。多くの方々から支えられまして、目指している医療が少しずつ実現してきていると感じています。改めて御礼申し上げます。

患者さんもそして私たちも、生じた障害をなんとか減らそうと考えます。障害を一言でいうと、病気の結果生じた生活上の制約です。生活上の制約ですから、センターで改善したとしても、お家での実際の生活でうまく行かないこともあります。生活はお一人一人異なりますから、困難の種類も異なってきます。たとえば、タオルを濡らし洗顔する土地柄と手で洗った後に乾燥したタオルで拭く土地柄があるそうです。麻痺のためにタオルを絞れない場合、困難さは全く違ってきます。

仕事の種類でも困難さは異なってきます。コンピュータの操作を仕事にしている方であれば、両足が麻痺していても、作業には差し支えが生じません。外回りの仕事をしている方では、両足の麻痺が障害となり工夫が必要となります。指1本が動かなくなると、楽器演奏者には大きな問題ですが、他の仕事の方では、不自由さはあっても仕事が続けられることもあります。

このように、障害はその方の住んでいる地域の習慣やその方の生活の歴史、社会での活動などによって、様々な形で現れます。障害軽減のお手伝いとは、その人その人で異なる意味を持つ障害を理解し、その人その人の生活を取り戻すことを支援することです。その人の生活を取り戻すということは誰にでも賦与されている基本的な権利です。

リハセンは患者さんの生活復帰の基本的な権利を実現することを願い、患者さんの生活上の希望を柱にし、患者さんが主体的に取り組むことを重視し、その結果、生活への復活に自信が芽生えるような医療を心掛けています。生活を取り戻すのはやはり患者さん自身が主役です。患者さんと医療従事者が力を合わせて病気と障害に立ち向かうことによって、障害の克服がなされます。リハセンは患者さん中心の医療を今後も追求したいと考えています。

最後になりますが、リハセンでは、リハセンドック、連休中訓練に取り組みはじめました。リハセンドックとは、リハビリに重要な体力検査を中心に、障害を引き起こしうる脳の画像検査、血液・尿検査等を半日で行なうものです。連休中訓練は3連休などでの運動能力低下を防ごうというものです。これらはいずれも患者さん方の希望から実現したものです。これらもご利用下さるようお願い致します。今年も、秋田県民の障害克服のために奮闘するつもりです。御協力よろしくお願い申し上げます。

(センター所長:千田 富義)

高額な契約のトラブルについて

痴呆の診療に携わっていて「社会全体として痴呆の問題に取り組む必要がある」「医療で痴呆に対応することに限界がある」と感じることがしばしばある。

昨年1年間で、金銭トラブルを主訴とした受診が、数自体は多くないのだが、2件あった。住宅のリフォームで不当に高額な料金を支払ったというケースと、約20万円という高額羽毛布団を購入させられたというケースの相談があった。プライバシーの関係で詳細は省くが、日常生活には特に問題なかったが、物の値段の相場があやしくなっていて、月々の生活費の中でどこにどの程度の出費をするかという金銭管理の方略ができなくなっていた方々が受診してきた。金銭管理の方略ができなくなっているということは、医療では治せないと思うのだが、金銭管理というのは一般常識の知識や理解や計算とは若干違うスキルのようで、一般常識の知識や理解や計算がかなり保たれていても金銭管理が滅茶苦茶、という痴呆の方を私は何人か経験している。したがって、金銭管理のスキルは、私などは心理検査にたよらず実際の金銭の使い方をみて判断してしまう部分がある。その受診した人の年金や貯金と生活ぶりから判断して、住宅のリフォームや20万円の羽毛布団は私からみれば不適切なものだった。しかし、本当に無駄かという価値判断は難しい。時々千円分のおまんじゅうを買って腹一杯食べていた痴呆の人がいたが、これは糖尿病になるのが心配だが私の感覚では浪費とは言わない。

私の親友でもないが知り合いで、年収500万程度なのに高額のローンを組んで1千万円を超えるポルシェ911を買った人がいた。お金がないといってよくカップメンを食べていたが、ポルシェ911のロケットのような加速がたまらない快感だそうで、食べ物はどうでもいいそうだ。私には理解できないが、その人はもちろん痴呆でないのでお金の使い方はその人の自由である。私がとやかくいう権利はない。ただ、痴呆の始まりで金銭管理の方略が少しずつできなくなっている場合には、どこまで本人の自由ということですませるのかは非常に難しい。

話は変わるが、新聞によれば、住宅のリフォームと羽毛布団は、痴呆でなくてもトラブルが多いらしい。口のうまいセールスマンが訪問してきたら、たとえ判断力は保たれていて痴呆ではないにしても、人のいいおばあちゃんは断れずに印鑑を押してしまうのではないか。「公序良俗に反しない限り当事者間のいかなる契約も有効である」らしいが、販売する側にも一定の制約を加えられないものだろうか。

(神経精神科:佐藤 隆郎)

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