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「聴診記:認知症 種類で治療法異なる」(2008年1月掲載)

下村 辰雄(リハビリテーション科):秋田魁新報 2008年1月28日掲載

高齢社会の進行などによって認知症患者が増加している中、2001年(平成13年)4月、県立リハビリテーション・精神医療センターに「もの忘れ外来」とリハビリテーション科で管理する認知症病棟が開設された。それまでの認知症診療は精神科が担っていた。しかし、問題行動が多く他の病院で扱うのが困難な患者、合併症のある重度の患者の受診、入院が相次ぎ、意図していた認知症の早期診断・早期治療を行う環境の確保が困難な状況だった。もの忘れ外来の開設で、徐々に早期患者の受診や治療可能な認知症の頻度も増えている。

もの忘れ外来では病歴や生活状況を聞くほかに、内科的・神経学的な診察や神経心理学的診察、高次脳機能障害スクリーニングテスト、認知症の行動および心理症状のスクリーニングテスト、さらにはMRI(磁気共鳴画像装置)やCT(コンピューター断層撮影装置)などによる画像検査を実施。認知症の有無や入院の必要性を判断している。

行動観察や治療の為に入院が必要な場合、一カ月から三カ月程度の入院をしてもらう。従来の医学的診断や治療に加え、チームアプローチによるリハビリテーション医療の観点から、日常生活動作の訓練、精神作業療法(集団療法)、回想法などを取り入れた認知リハビリテーション、レクレーション活動を行う。また、家族ら介護者への認知症に関する教育も行い、在宅で生活するのが困難なときは退院後にどうするか検討する。

認知症は特定の疾患名ではなく、種々の病気によって生ずる臨床的な状態を指す。脳に障害が起きることで、発達していたさまざまな知的機能が継続的に低下する。

主な原因疾患はアルツハイマー病と、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害。レビー小体病がそれらの次に多い。ほかには前頭側頭葉変性症(ピック病)、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、頭部外傷、脳外科疾患(正常圧水頭症など)、炎症性疾患(脳炎など)、慢性アルコール中毒、内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)、ビタミンB1欠乏症、代謝性疾患(肝不全、腎不全など)などがある。

認知症は、その種類によって根本的な治療や予防ができるものとできないものがあり、治療法も異なる。根本的な治療法がない疾患も特徴的な障害や精神症状のパターン、神経症状の有無、進行速度が異なり、介護やリハビリテーションの仕方が違う。正確な診断、詳細な病態の説明、各種制度やサービスを活用していかに介護するか指導することが認知症専門診療の最も重要な役割である。

秋田魁新報 2008年1月28日

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