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「聴診記:レビー小体型認知症 症状に幻視、誤認妄想」(2008年3月掲載)
下村 辰雄(リハビリテーション科):秋田魁新報 2008年3月31日掲載
レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症と合わせ三大認知症といわれる。実際、物忘れ外来を受診した患者の家族から、「父には何かが見えているようだ。歩行は小刻みで転びやすく、頭がはっきりしている時とそうでない時に差がある。レビー小体型認知症ではないか」と訴えがあり、診察するとそうだったケースも少なからず経験している。
レビー小体型認知症の特徴的な症状は認知機能の変動、幻視、誤認妄想、パーキンソニズムによる歩行障害である。
認知機能は数時間から数カ月のうちに明らかな変動が見られる。良い時は記憶力や理解力も問題ないが、低下した時には状況が認識できず、話が全く通じなくなる。現在いる所や、今がいつかといったことが分からなくなる見当識障害も強い。注意力が散漫になり、一貫した行動や思考も難しくなる。日中の眠気も特徴で、
- 昼間に過度の眠気を感じる
- 昼寝を二時間以上する
- 長時間ボーッとする
- 会話が混乱する
のうち三つ以上当てはまれば、レビー小体型認知症である可能性が高い。
幻視は色彩を伴い、鮮明で生々しい。「赤い服を着た子供が見える」「ベッドの下にたくさんヘビがいる」といった具合に人、動物、虫などが昼夜を問わず出現するが、特に夕方から夜にかけて生じやすい。人物は家族や親類に限らず、他人のこともある。意識がはっきりしている状態でも現れ、患者自身が幻視の詳細な内容を話せる。
誤認妄想では、誰もいないのに誰かがいると訴えたり、テレビドラマを実際にあったかのように信じたりする。亡くなった人が生き返った、自分は亡くなっているといった妄想を抱く人もいる。
パーキンソニズムは発症初期から現れる。主に筋肉がこわばったり、動作が緩慢になる。手や指の震えは目立たないことが多い。パーキンソニズムが重度になると、体のバランスが崩れたときに反射的に立て直す能力が低下したり、スムーズに歩けなくなり転倒事故の危険性が高まる。
レビー小体型認知症では、このほかにも失神、一過性の意識消失、うつなどの症状がでることがある。治療法として、最近は塩酸ドネペジルや非定型抗精神病薬の有効性が指摘されている。
秋田魁新報 2008年3月31日