患者の皆様へ


patient

心の健康コーナー:第7話『睡眠とその障害』(2001年4月掲載)

その1:正常な睡眠(1)

はじめに

現在では、文明国の20パーセントから30パーセントの人が睡眠障害に悩んでいるといわれています。そして、精神的なショックをうけたときなどに一時的に生じる場合を含めますと、不眠を体験したことのない人はほとんどいないといえるでしょう。このように、睡眠障害が身近な症状であるためか、あまり重視されない傾向があります。しかし、睡眠は健康維持に欠かせないものであるだけでなく、いろんな身体や精神の病気と深い関わりがあります。今回は、正常な眠りの特徴の話から始めたいと思います。

睡眠の質を客観的に判断できる!

人が目覚めているのか眠っているのか、眠りの深さはどのくらいかは、脳波の特徴から客観的に判断できます。しかし、睡眠の状態をより詳しく判定するためには、脳波に加えて、眼の動き、顎(アゴ)の筋電図を同時に記録するという睡眠ポリグラフ法が用いられます。それは、レム睡眠を区別するためです。レム睡眠の最大の特徴は急速な眼球運動が頻繁に現れることですが、加えて、首や手足の運動が起こりにくくなります。また、レム睡眠中には鮮明な夢を見ることが多いのです。レム睡眠以外の睡眠をノンレム睡眠と総称しますが、脳波の特徴に基づいて、浅い方から順に、1から4まで4段階に分けられます。

(2001年4月)

その2:正常な睡眠(2)

一夜の睡眠の経過

図に示せないので分かりにくいでしょうが、夜に眠り込んでから朝に目覚めるまでの間に睡眠は変化しています。前回に紹介しました睡眠ポリグラフ法を用いて睡眠を分析しますと、2つの大きな特徴が見られます。1つには、睡眠は深くなったり浅くなったりを繰り返します。もう1つは、レム睡眠とノンレム睡眠が約100分の周期で何回も繰り返されることです。レム睡眠は明け方に多く出現する傾向があり、深いノンレム睡眠(段階3と段階4)は睡眠の前半に多く出現します。そして、一晩の間には何度か目覚めるのが普通ですが、目覚めている時間が短い場合には「目が覚めてしまった」という体験を忘れてしまいます。また、何度も夢を見ているはずですが夢の内容を忘れることがほとんどです。一晩の睡眠中にレム睡眠やノンレム睡眠の各段階が出現する比率は、各年齢層でほぼ一定しています。では、健康を維持するのに必要な1日当たりの睡眠時間は何時間でしょうか?一般に、7時間から8時間と言われていますが、個人差がかなり大きいもので、極端に短かったり、長かったりしなければ気にする必要はないと考えられます。

(2001年4月)

その3:正常な睡眠(3)

睡眠障害の種類

睡眠障害は、 「表1:睡眠障害の種類 」に示したように、4つに大別されますが、専門書には100近い診断名が並べられています。不眠症は最も頻度が高く、良く耳にされると思います。過眠症とは、特に睡眠不足ではないと自覚するのに、日中に強い眠気が生じて日常生活に支障を来たす病気のことです。睡眠・覚醒リズムの障害というのは、海外旅行による時差ボケや夜勤に伴う睡眠障害などの他に、ぐっすり眠れる時間帯が大きくずれて昼間にしか眠れないなどの特殊な状態があります。そして、パラソムニアは、起きているときには生じないのに夜間や睡眠中にのみ現れる病気や症状のことで、子供に多い夢中遊行や夜尿などが代表的な現象です。

表1:睡眠障害の種類

  1. 不眠症
  2. 過眠症(傾眠症)
  3. 睡眠・覚醒リズムの障害
  4. 睡眠中に起こる異常現象(パラソムニア、メタソムニア)

(2001年4月)

ページトップへ戻る