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「元気が出すぎる病気」について(2009年9月掲載)
2009年9月
世の中の情勢が年々厳しくなっているせいか、いわゆる「うつ病」といって元気が出なくなる病気が目立つようになりました。テレビや新聞でも特集したりするので、うつ病については、よくご存じの方が増えてきたと思います。しかし、逆の症状の病気があることはあまり知られていないようです。それは「元気が出すぎる病気」です。「躁病(そうびょう)」と呼びます。この病気は元気が出なくなるうつ病とセットになっていることが多く、うつ病で苦しんだ後、やっと治ったと思ったら逆に元気が出すぎるようになり、数時間しか眠らなくても平気で1日中、活動したりするようになります。いつもは控えめな人が急に大胆で積極的となり、妙に強気になって大げさな主張を始めて周囲を驚かせたりします。うつ病になった場合は大変つらい症状がでますので、患者さん本人も当然、自分は病気だと気付くのが普通ですが、躁病の場合は違います。人により症状の出方にかなり差があり、不機嫌になり怒りっぽくなるのが目立つ人もいますが、「気分がよくなり」、やたらと積極的、行動的になりすぎる人もいます。後者の場合は、周囲は人が変わってしまいますので、その異常に気付くことが多いのですが、本人自身は気分がよいので、自分は病気ではないと言い張り、心配した家族などが精神科受診を勧めても拒否してトラブルになることも多いようです。また、躁病の症状が軽い場合は、うつ病が治ったあとなどに軽い躁病の症状が出ても、家族も妙に元気だなと思ってもあまり気にせず、数週程度で症状がおさまる場合には、そのまま見過ごされてしまうこともあります。
世の中には生まれつき、1年中、元気がよい人もいますので(性格的に元気な人は病気ではありません)話が複雑になりますが、いつもは穏やかで常識的な人が妙に元気がよすぎて、数時間しか眠らず、その人本来の性格からは想像出来ないほど、軽はずみになったり、やたらと強気になり必要もない喧嘩をするようになった場合、本人が「自分は気分がよいから病気ではない」と主張しても、もしかしたら、「元気が出すぎる病気」、「気分がよくなる病気」かもしれないと考えてみる必要があるかもしれません。ただし、先ほど、申し上げたような性格的に元気な人や新しい目標を見つけて張り切っている人へ、「あなたは躁病ではないか」などと見当はずれの指摘をすることは大変失礼なことになりますから、慎重な判断が必要ですが。