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うつ病と睡眠薬(2015年7月掲載)

暑くなってきました。皆様、いかがお過ごしでしょうか。今回は、うつ病治療時の睡眠薬の利用法についてお話しします。

うつ病は多くの国民がかかる病気ですが、症状として不眠が伴うことが多く見られます。教科書的には、早朝覚醒といって、「寝つきはよいが、数時間で目覚めてしまい(例えば、午後10時就寝で午前1時から午前2時に目覚めてしまう)、その後はもう眠れない、あるいはうとうと状態が続く」不眠が典型的とされます。しかし、実際は、入眠困難(寝つきが悪い)、中途覚醒(眠りが浅く、度々目覚める)などの色々なタイプがあり、時々、全部ありという人もいます。

うつ病の治療の時には、夜に十分に眠り脳をゆっくり休めてもらうために、抗うつ薬(うつ病そのものをよくする)、抗不安薬(不安感をやわらげ、休養しやすくする)などに加えて、症状が強い時期には睡眠薬を投与することが多くあります。この際の患者さんでよく見られる「勘違い」をご紹介します。

その一つは、「睡眠薬はくせになるので、服まない」と頑張ることです。症状が強い時期はゆっくり休む必要があるので、夜に眠れないことを放置するのは治療上のマイナスが大きいのが普通です。ですから、主治医の先生から睡眠薬の服用を勧められた時は、頑張ってつらい思いを我慢する必要はありませんから、無理せずに服用した方がよいと思います。

別のパターンもあります。つらい症状が治まり、後はしばらく再発予防用の服薬だけをすればよい時期となった時です。この場合、抗不安薬や睡眠薬は不要となります。両者とも長期服用は依存性を高めますし、これらの薬には再発予防効果はありません(抗うつ薬は再発予防効果があり、依存性は普通ありません)。ところが、このような時期の患者さんで「抗うつ薬はやめたい。しかし、睡眠薬は続けたい」と希望する方が時々います。しかし、これは損をする薬の服み方です。病気の再発を予防する効果はなく、いたずらに自分の体と心を薬から離れにくくするからです。どうも、「睡眠薬をやめる」から「又、不眠になる」となり「又、病気が再発する」と連想が進むためのようです。しかし、抗うつ薬をやめることが再発につながることはありますが、睡眠薬や抗不安薬の中止が再発とつながることは医学的に考えがたいことです。

ですから、このような場合、主治医から「少しずつ、睡眠薬を減らしましょう(抗不安薬も同様)」と勧められた時には、積極的にやめるように工夫してみて下さい。案外、簡単にやめることが出来るものです。

ご心配なのは当然だと思います。しかし、精神科の薬は上手に利用すると素晴らしい効果を示してくれますが、使用法を誤ると損をする場合もあります。「自分が一番(長い目で見て)得する」利用法を教えてもらい、精神科の薬を活用するようにしたいものです。

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