患者の皆様へ
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リハセン『こころのケアチーム』第1班報告(神経精神科 室岡 守)
新潟県中越大震災では、震災直後より被災者の「こころのケア」をすべく全国各地から多数の精神科医療チームが現地に入り支援にあたっています。
秋田県チームの構成は、医師1名、看護師1名、事務職1名の計3名。富山県チームと同時に11月25日(木曜日)から川口町に入りました。活動拠点は川口町立老人憩いの家。秋田県チームの宿泊所は見附市に置いて、川口町まで毎朝出勤という形をとりました。
当時の川口町の復旧・避難状況としては、家屋や鉄道については問題が山積みであるものの、ライフラインや道路の復旧は進行中。避難所は縮小傾向で、12月初旬から仮設住宅入居予定となっている地域も目立っていました。また、身体診療科については病院・医院が再開したところも多く、概ね利用が可能となってきていました。
「こころのケア」秋田県チームは、山梨県および静岡県の2チーム分のエリアを引き継いだため、膨大な情報が申し送られました。
第1班としては、まず「百聞は一見にしかず」と考え個別訪問と避難所訪問を主体に活動を開始しました。
未だに道路は崩壊しているところも多く、土砂や隆起や深い亀裂を避けながら車で移動。危険判定をうけても撤去されず傾いて崩れ落ちそうな家々を通り抜け、地図を片手に訪問先を探して歩きました。
訪問先では被災者の方々のお話しを聞き、お一人お一人に適したこれからの「こころのケア」の方針を立てていきました。
震災から5週目に入ったこの時期は、緊急に治療的対応が必要とされる方は減少し、むしろ震災直後から隠されていた「こころの傷の痛み」が表に出てきた印象で、中・長期的に地道なケアを必要とする方が目立っていました。
具体的な症状としては、震災という強いストレスにさらされたことによる不眠、不安、イライラなどの抑うつ症状が遷延しているというものが多く、二次的にアルコール問題や子どものストレス反応が表面化する時期でもあり注意を要しました。
震災直後から続けられてきた面接や投薬が功を奏してきたこともあり、秋田県チーム第1班最終日の11月30日(火曜日)の時点で、「こころのケア」継続が必要と判断された方は初日の3分の2程度まで減少。今後もさらに縮小できる見通しとなりました。
しかし私達の短い滞在期間だけでも、未だに自宅ガレージに寝泊りしている方、何代も守り通してきた家の取り壊しに涙している方、やっと得た仕事を失って呆然としている方、怯え戸惑うわが子に親としての自信をなくしている方などに出会い、まだまだ震災の傷は深いことを痛感しました。
12月2日(木曜日)からは秋田県1チームだけで川口町全エリアをカバーすることになりました。短い期間ではありますが、当センターによる「こころのケア」活動により被災者のこころが1日でも早く癒されるように支援を続けていきたいと思います。