患者の皆様へ


patient

リハセン『こころのケアチーム』第3班報告(神経精神科 小畑 信彦)

第3班は平成16年12月4日(土曜日)から12月10日(日曜日)までの派遣でした。やはり、医師1名、看護師1名、事務員1名の陣容。

写真1:こころのケアチーム
出発時の写真。右から2人目は秋田から新潟まで送り届けてくれた運転手の人です。

現地の気温は5度から10度位の日が多く助かりましたが、天候には恵まれませんでした。曇り一時雨の日が多く、時に、みぞれやあられも少し降りました。他のこころのケアチーム、保健師さんたちは既に引き上げた後だったので、拠点の「老人いこいの家」には町職員以外に、外部支援のチームは我々のみで他にボランティアの人たちが少しいらっしゃるだけでした。

町全体でも復興が進み、ライフラインはほぼ問題なく、12月4日、5日から仮設住宅への移動が始まり、一応の生活確保が達成されつつある状況でした。交通上も迂回路、山中の一部道路以外は危険なく、渋滞が主な支障であるような印象でした。しかし、まだ崩壊寸前の家屋が残されていたり、鉄道も補修工事中で不通であるなど、本格的な復興はまだまだなようです。

写真2:鉄道の様子
鉄道はまだ補修中で不通です。
写真3:道端の様子
小山のように見えるのは、はがされた道路舗装面の残骸。

支援活動の内容も復興が進むとともに変化してきています。今まで活動の主体だった訪問活動は終了の方向に向かいつつあり、第2班から訪問継続がある旨引き継いだ事例は10例弱でした。これらの事例についても、第3班の活動中に、投薬継続中だった数例は現地の医療機関へ申し送り、投薬終了となりました。

第4班には数例の相談継続例を申し送るのみとなりました。主な活動となったのは拠点滞在型の精神保健活動です。現地の保健師さんと相談し、精神保健面でのバンフレットを作ることとなり、小児の精神保健についてのお母さんたち用のもの、PTSD一般の説明用、職員へ休養の必要を呼びかける内容のものなどを作成しました。

ほかに、近くの保育園で保育士の皆さんへ地震後の小児の精神保健に関する講演を行い、非常に歓迎されました。

また、新規事例の訪問相談あるいは来所相談の事例なども数件程度受けました。

地震後の小児の精神保健相談が印象的だったので、少し詳しく報告します。地震後からのおびえが遷延している例もありましたが、特徴的だったのは被災後、数週から1カ月してから、頻尿、不眠・不穏、癇癪(かんしゃく)・不穏などの症状が顕在化してきた例が数件みられたとのことです。原因を十分に分析することは出来ませんでした。どうやら地震の直接的なショックだけでなく、両親の過労、動揺などが影響し、家庭内の雰囲気がきまずくなり、敏感な子供さんたちがそれに影響を受けたような印象でした。この場合、「子供がわがままになった」と受け止められ、「しつけのために叱るべきか」と悩まれる家族の方が多いようです。この場合、叱ることは子供さんの不安感や憂鬱(ゆううつ)を増して、事態を悪化させるだけなので、暖かく見守り続けることが大事だと考え、現地の皆さんへ説明しました。

今後は仮設住宅での中高年のうつ状態、アルコール乱用などの問題が出現しそうですが、外部支援には限界があるので、現地の関係者の皆さんへ円滑な形で業務を引き継ぐのが課題になりそうです。

最後に、現地の皆さんの苦悩の大きさに負けない奮闘ぶりを拝見して、まだまだ日本人には底力があるなあと、実感したことを付け加えます。

ページトップへ戻る